後継者がいない会社の選択肢 事業承継4つの方法を比較する

事業承継の基礎知識

後継者がいない会社の選択肢
事業承継4つの方法を比較する

親族内承継、従業員承継、M&A、そして廃業。それぞれに向き・不向きがあり、手元に残る金額も大きく異なります。判断材料を整理します。

📖 読了時間 約9分 👤 中小企業オーナー・後継者向け 📅 2026年最新版
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事業承継とは・中小企業を取り巻く現状

定義

事業承継とは、会社の経営を後継者へ引き継ぐことを指します。引き継ぐ対象は「経営権」だけではありません。株式・事業用資産といった「資産」技術・ノウハウ・人脈・信用といった「知的資産」を含めて承継してはじめて、事業は継続します。とりわけ知的資産の承継には数年単位の時間を要します。

約57%
中小企業の後継者不在率
(帝国データバンク 2023年調査)
約245万人
2025年までに70歳を超える中小企業経営者数
(中小企業庁 推計)
約半数
うち後継者未定とされる割合
(中小企業庁 推計)

事業承継は「いつかやること」ではなく、準備に5年から10年を要する経営課題です。後継者の育成、財務体質の改善、株式の集約、いずれも短期間では完了しません。経営者が60代に入った段階での着手が一般的な目安とされています。

なぜ早期の着手が必要か:準備不足のまま経営者が高齢化・病気などで急に判断できなくなると、選択肢は大きく狭まります。特にM&Aは、業績が安定し経営者が現役で引継ぎに関与できる時期のほうが、条件面で有利になる傾向があります。「まだ元気なうちに考える」ことが、結果として会社と従業員を守ります。

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事業承継 4つの選択肢

後継者問題への対応は、大きく4つに整理できます。それぞれ必要な準備期間も、経営者が得られる対価も異なります。

👨‍👩‍👦 ① 親族内承継
子ども・配偶者・兄弟など親族に引き継ぐ方法。従来の中心的な形でしたが、近年は割合が低下しています。
課題:後継者の意思、相続・贈与税、他の相続人との調整
👔 ② 従業員承継(社内承継)
役員や幹部社員へ引き継ぐ方法。事業への理解が深く、社内外の反発が少ない点が利点です。
課題:株式買取資金の調達、個人保証の引継ぎ
🤝 ③ M&A(第三者承継)
社外の企業へ株式や事業を譲渡する方法。譲渡対価を得られ、後継者を探す必要がありません。
課題:相手先探し、条件交渉、従業員への説明
🚪 ④ 廃業・清算
事業を停止し会社を清算する方法。他の選択肢が取れない場合の最終手段となります。
課題:従業員の雇用喪失、取引先への影響、清算コスト

優先順位の考え方:一般に「①親族内 → ②従業員 → ③M&A → ④廃業」の順に検討されます。ただしこれは優劣ではありません。無理に親族へ承継させた結果、後継者が苦しみ会社も傾くケースは珍しくありません。会社と従業員にとって最善はどれかという基準で、フラットに比較することが重要です。

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それぞれの長所と短所

4つの選択肢を、経営者にとって重要な観点から比較します。

観点 親族内承継 従業員承継 M&A 廃業
譲渡対価 ほぼなし(贈与・相続が中心) 少額〜中程度 得られる 残余財産のみ
従業員の雇用 維持される 維持される 原則維持 失われる
個人保証 後継者へ引継ぎ 後継者へ引継ぎ 解除されるのが一般的 債務弁済が必要
取引先・屋号 維持 維持 維持されることが多い 消滅
準備期間 5〜10年 3〜5年 数ヶ月〜1年程度 数ヶ月〜1年
主な障壁 後継者の意思・相続税 株式買取資金 相手先探し・条件合意 清算費用・心理的負担
親族内・従業員承継が向くケース
後継者候補に明確な意思と適性がある
準備期間を5年以上確保できる
株式の買取資金または贈与の目処が立つ
金融機関が保証の引継ぎに理解を示している
M&Aが向くケース
親族・社内に適任者が見当たらない
個人保証から解放されたい
従業員の雇用を確実に守りたい
大手の資本・販路で事業を伸ばしたい
⚠️ よくある判断の失敗
  • 「まだ元気だから」と先送りし、選択肢が廃業しか残らなくなる
  • 親族への承継にこだわり続け、後継者候補が疲弊して離れてしまう
  • 従業員承継を決めたが、株式の買取資金を確保できず頓挫する
  • 業績が下降し始めてからM&Aを検討し、条件が大幅に悪化する
  • 相談相手を持たず、経営者が一人で抱え込んで判断が遅れる
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廃業とM&Aで、手元に残る金額はどう違うか

意外に知られていないのが、廃業には相応の費用がかかるという点です。「もう畳むしかない」と考える前に、金額面での違いをご確認ください。

項目 廃業・清算を選んだ場合 M&Aで譲渡した場合
事業の価値 評価されない(資産を個別に処分) のれん(超過収益力)が価格に反映される
在庫・設備 処分価格での売却。簿価を大きく下回ることが多い 事業の一部として引き継がれる
不動産の原状回復 賃借物件の場合、費用が発生 原則不要
従業員の退職金 一括して支払いが必要 雇用が継続するため不要
清算手続の費用 登記・専門家報酬等が発生 不要(仲介手数料は別途)
従業員の雇用 全員が離職 原則として維持
取引先との関係 取引終了。仕入先・得意先にも影響 継続されることが多い

「赤字だから売れない」は誤解です。直近の決算が赤字でも、技術・許認可・人材・顧客基盤・立地といった要素が買手にとって価値を持つケースは少なくありません。実際、役員報酬や節税目的の経費を調整すると実質的には黒字、という中小企業も多く存在します。まずは企業価値を評価してみることが、判断の出発点になります。

税金の取扱いについて:株式譲渡による譲渡益、廃業時の清算所得、退職金など、選択肢によって課税関係は大きく異なります。手取り額を正確に比較するには個別の試算が必要です。具体的な税額の計算は税理士にご相談ください。

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検討のタイミングと進め方

どの選択肢を採るにせよ、検討は次の流れで進みます。最初の2ステップは、方針が固まっていなくても着手できます。

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STEP 1
現状の把握
自社の財務状況、株式の分散状況、個人保証・担保の内容、後継者候補の有無を整理します。決算書3期分と株主名簿があれば、おおよその見取り図が描けます。
目安:1〜2ヶ月
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STEP 2
企業価値の把握
自社がいくらで評価されるのかを知ることで、選択肢の現実味が判断できます。M&Aを選ばない場合でも、株価は親族内承継の贈与税・相続税に直結する重要な情報です。
目安:2週間〜1ヶ月
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STEP 3
方針の決定
4つの選択肢を比較し、方針を定めます。ここで重要なのは、経営者お一人で決めないことです。家族、信頼できる役員、外部の専門家それぞれの視点を得たうえで判断します。
目安:1〜3ヶ月
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STEP 4
実行準備
親族内・従業員承継なら後継者育成と株式移転の設計。M&Aなら資料整備と候補先の選定に進みます。並行して、財務体質の改善や不要資産の整理を行うと条件が良くなります。
目安:方針により大きく異なる
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STEP 5
実行・引継ぎ
株式の移転、経営権の引継ぎを実行します。引継ぎは一日で終わるものではありません。取引先への紹介、業務の引継ぎ、社内体制の移行に一定の期間を確保してください。
継続的

STEP 1・2は方針が決まっていなくても着手できます。むしろ、現状と企業価値が分からないまま方針だけ先に決めてしまうと、後戻りが生じます。「まだ何も決めていない」段階でこそ、情報を集める価値があります。

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準備すべきこと・チェックリスト

どの選択肢を採る場合でも、共通して整えておくべき事項があります。着手前にご確認ください。

📊 財務・資産の整理
直近3期分の決算書・申告書を揃える
株主名簿を確認し、株式の分散状況を把握
個人保証・担保提供の内容を確認
会社と経営者個人の資産・取引を切り分ける
不要資産・遊休資産を整理する
簿外債務・未払残業代等の有無を確認
役員報酬の水準を把握しておく
🏢 事業・組織の整理
主要取引先との契約書を整備
許認可の内容と承継可否を確認
就業規則・労務管理の状況を点検
経営者に依存している業務を洗い出す
キーパーソンとなる従業員を把握
特定取引先への依存度を確認
知的財産・ノウハウを文書化する
⭐ 事業承継を成功させる6つの視点
  • 早く着手する(5〜10年前が理想)
  • 選択肢を狭めず、フラットに比較する
  • まず自社の企業価値を知る
  • 経営者個人と会社の資産を分ける
  • 経営者に依存しない体制をつくる
  • 一人で抱えず、外部の視点を入れる

相談先について:顧問税理士、取引金融機関、各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センター、M&A支援機関など、複数の相談窓口があります。それぞれ得意分野が異なるため、複数の意見を聞いたうえで判断することをおすすめします。相談したからといって、その方針に進まなければならないわけではありません。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別案件の法務・税務・投資アドバイスを構成するものではありません。税務上の取扱いについては税理士に、法務上の論点については弁護士にご相談ください。記載の数値・統計は公開情報に基づく参考値であり、最新の状況とは異なる場合があります。

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